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退職金は東京電力でも大きな問題です

東電年金削減 課題山積み 第三者委案の検討開始

 東京電力は、福島第一原子力発電所事故の賠償に向けたリストラ策として、企業年金削減の検討を始めた。国の原子力損害賠償支援機構から資金の支援を受けるためには、コスト削減を徹底する必要があるからだ。ただ、労働組合やOBの同意が必要で、実現は簡単ではなさそうだ。(山下福太郎、井上忠明)
 ◆最大削減2190億円
 東電は、リストラ策を盛り込んだ特別事業計画を機構と共同で10月中にもまとめる。人件費の削減は柱の一つで、東電は2012、13年春の新卒採用を見送るなどして人員削減を図る方針だ。企業年金も見直し、現役社員だけでなくOBの給付利率も引き下げを検討する。
 政府の第三者委員会が3日発表した報告書では、3通りの年金削減案が示された。給付利率を2・0%から1・5%に下げ、終身年金は30%削減することを前提に〈1〉現役のみ対象とする〈2〉現役とOBを対象とする〈3〉現役とOBを対象とし、現役の退職一時金も10%削減する--という3案だ。10年間の削減額は最大2190億円になるという。
 ただ、OBも含めた削減には、労組に加えOBの3分の2以上の同意を得る必要がある。協議は特別事業計画の策定後になる見込みだが、早くも労組やOBからは「年金削減は世論を意識したもので、必要ない」との声が出ている。
 ◆OBが焦点
 企業年金の削減は、積み立て不足の解消のため現役社員を対象に行う場合が多く、年間100件を超える年もある。ただ、OBも対象とする例は少なく、07年以降に厚生労働省が認可したのは日本航空など3件だけだ。また、東電の企業年金は11年3月期で81億円の資産超過で、積み立て不足ではない。厚労省によると、資産超過でOBの年金を減らした例はないとみられる。
 OBの年金受給権は財産権として厳格に保護されており、厚労省の認可は企業の著しい経営悪化が条件となる。東電は機構の資金支援で今後も利益を確保する見通しで、認可されるかどうかははっきりしない。
 一方、OBの同意と厚労省の認可が得られた場合も、確定給付企業年金法では、OBには削減前の給付水準のままの年金を一時金として一括で受け取る権利があると決められている。多くのOBが権利を行使すれば、試算通りに年金額は削減できず、実効性も不透明だ。

[読売新聞社 2011年10月8日(土)]