ズバリ!実在退職金 トップ> 退職金の制度 Q&A 相談コーナー> 失敗事例 1

退職金の制度 Q&A 相談コーナー

【失敗事例 1】
従業員代表を選出せずに退職金の規程を変更。後から無効だと訴えられる

社長 困った問題が起きました。辞めた社員から退職金の額がおかしいと言ってきたのです。

北見 どういう意味ですか?

社長 先月辞めた社員のAさんは、40年務めた永年勤続者でした。Aさんの退職金は1000万円でした。これは新規程の退職金の制度による額です。ところがAさんは「なぜ、1000万円なのか? 退職金の規程によれば1500万円のはず」と言って来ました。

北見 なぜ、退職金の額に差があるのですか?

社長 退職金の規程を1度変更したことがあります。最初の退職金の規程は、まだ昭和の時代に作成されたもので、その内容は「退職時の基本給×勤務年数別乗率=退職金」となっていました。しかし、平成20年に退職金の規程を変更しました。その退職金の新規程は「退職時の基本給×0.7×勤務年数別乗率=退職金」としました。

北見 つまり退職金のベースを3割下げたのですね。

社長 その通りです。

北見 それがなぜ平成24年になって、もめているのですか?

社長 そのAさんいわく、「退職金の規程は、社員に説明もせずに勝手に引き下げられた」というのです。

北見 労働基準法で定められた変更の手続きをされたのですか? 退職金の規程は、就業規則の一部です。就業規則の変更は、労働基準法で定められた手順を踏む必要があります。その手順とは、従業員代表の意見聴取です。労働基準法は次のように定めています。

労働基準法 第90条
使用者は、就業規則の作成又は変更について、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。

社長 当社はこれまで、そのような従業員代表の選出をしたことがありません。

北見 といいますと、どうやって選んでいるのですか?

社長 社員の中から適当に指名をして「異議なし」とサインしていただいています。この平成20年の退職金の規程の変更に際しても、総務課長代理のB氏が従業員代表になっています。

北見 いけませんね。これでは退職金の規程を変更したことにはなりませんよ。争いになれば会社は負けて、新しい退職金の規程は無効になるかもしれません。

社長 へえ、そうですか、大失敗ですね。

北見 ところで、この退職金の規程は、誰が作ったのですか? 社会保険労務士とか専門家に委託したのではないのですか?

社長 社会保険労務士に委託しました。その結果がこれです。その社会保険労務士は生命保険の販売に熱心で、保険の売り込みは一生懸命だったのですが、契約が取れると来なくなりました。だから従業員代表の選出なんてアドバイスもありませんでした。

>>次のページへ  ポイント制の退職金の制度を導入したが・・・