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厚生年金基金は積立不足の拡大で、会社の悩みの種です

年金基金解散で連鎖倒産 兵庫のタクシー会社 積み立て不足分払えず

◆「偽装の疑い」訴訟も
 神戸市長田区のタクシー会社が11月、神戸地裁に破産を申請した。加入していた厚生年金基金(清算中)が2006年に解散したが、その後も続く年金積み立ての不足分の支払いが足かせになったといい、同様の破綻は50社中計13社にのぼる。支払いは、完済していない会社が連帯して分納しており、1社の倒産が他社の負担を増やす悪循環に陥っている。基金側が「負担逃れの偽装倒産ではないか」として提訴する例もあり、さらなる事業破綻も懸念される。
 兵庫県内のタクシー会社が加入していた「兵庫県乗用自動車厚生年金基金」は1970年設立。国に納める年金保険料の一部を預かって運用し、利益は年金の上乗せ分として加入各社に支給していたが、高齢化に伴う支給増や不況による運用難から解散した。
 解散当時、国に納める厚生年金の不足額は71億円。24億円を一括納付した21社を除く29社は47億円を10年で分納することになった。負担額は規模に応じ、月約5万6000円~322万円で、倒産した場合は他社が負担することも決めた。
 民間調査会社によると、11月の破綻も、負債総額1億8300万円のほぼ全額が基金関連だったという。
 今春、破産申請した神戸市内のタクシー会社は10年で計1億5000万円、月130万円の分納を始めたが、負担金は1億8000万円と逆に膨れたため事業停止した。元社長(58)は「返しても返しても負担が増えた。会社をたたむしかなかった」と振り返る。
 一方、倒産会社の役員が、事前に車両を売却するなどした別会社の役員に就き、タクシー業を続けている例もある。基金側は08年10月、「負担逃れのために倒産し、財産を不当に移動させた」と別会社4社などに損害賠償を求めて神戸地裁に提訴。別会社側は「やむを得なかった。違法な事業譲渡ではない」と争っている。
 厚生労働省によると、ほかにも全国の4基金が分割納付を決めて解散したが、連鎖的な倒産につながった例はないという。
佐藤保久・流通科学大教授(保険金融論)は「解散時のルールは見直せる柔軟さが必要だ。解散のあり方も根本的に変えないと負の連鎖は断ち切れない」と指摘する。

〈厚生年金基金〉
1966年に制度化された企業年金の一つ。企業や従業員が国に納める厚生年金保険料の一部を独自運用し、国に代わって年金を支給する「代行部分」があり、必要額を積み立てる。大企業などの単独型、中小企業が集まった総合型などがある。ピークの97年3月には1883基金あったが、資金繰りの悪化などで2009年3月には608基金に減少。うち590基金が積み立て不足に陥っている。
 図=連鎖倒産の構図

[読売新聞社 2010年12月15日(水)]