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退職金は制度変更に伴いトラブルが多いのも事実です

自社株で退職金 日本版ESOP


■企業…安定株主を確保 従業員…「含み益」に期待
 企業が自社株を活用して従業員に退職金を給付する制度「ESOP」の日本版が、従業員の労働意欲の向上や、上場企業同士による株式の持ち合い解消につながる有効策として注目を集めている。企業にとっては従業員を安定株主として確保できる利点があり、従業員側も自社の業績が好調な場合、含み益なども期待できるのが魅力とされる。
 ESOPは米国で普及し、日本では従業員持ち株制度の一つとして4年ほど前から導入企業が増えた。従来の従業員持ち株会は事前計画に従って株式市場で定期的に自社株を取得しなければならないが、日本版ESOPは保有企業や市場から機動的に買い付けられる利点がある。
 企業会計基準の変更をにらみ、株価変動が業績を左右する事態を避けるなどの理由から、上場企業は今後も株式持ち合いの解消を加速させるとみられる。そのため、自社株が大量に市場で売却される際、ESOPが受け皿となって株価下落を防ぐことができ、安定株主を確保できる。
 りそな銀行の集計では今年3月末時点でブックオフコーポレーションなど少なくとも88社が導入。このうち「株式給付型ESOP」は、7月開始予定の第一生命保険など14社(3月末時点)が導入し、徐々に普及している。
 株式給付型は、企業が自社への貢献度に応じて従業員にポイントを付与し、退職時に蓄積ポイントを現金に換算した額に相当する自社株を割り当てる。運用を受託した信託銀行などが同社株を市場で購入後は簿価で固定され、株価が上がれば含み益は従業員のものとなる。下がったときの評価損は会社が負担するが、会社側にとっては損失補填(ほてん)分を損金に算入できる税制上のメリットもあるという。
 ただ、東日本大震災や福島第1原子力発電所事故などの影響で、国内株式市場は低迷気味。今後も日本版ESOPの導入企業は増えそうだが、業績が向上しても株価の上昇に結びつきにくい企業も予想され、想定以上の「手取り」がもらえる“一石二鳥”を狙うのは難しいとの見方もある。


【用語解説】ESOP
エンプロイー・ストック・オーナーシップ・プラン(従業員による株式所有計画)の頭文字を取った言葉で、「イーソップ」とも呼ぶ。米国では1950年代に最初のスキームが採用された。米国や英国では税制上の扱いが根拠法で明確に定められているのに対し、日本では法制が未整備のため、個別の判断については税理士など専門家への相談が必要とされる。

[産業経済新聞社 2011年5月31日(火)]